日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (096)

Q:

最近,超高層マンションが数多く見られるようになりました。住戸間の隔壁はコンクリート製ではなくボード貼の構造が使われているようですが,遮音性能上問題は無いのでしょうか。

A:

マンション(共同住宅)の住戸間隔壁(界壁)の遮音性能は,2001年9月現在,建築基準法で規定している唯一の音環境性能で,音響透過損失として125Hz帯域で25dB,500Hz帯域で40dB,2,000Hz帯域で50dB以上を必要としており,コンクリート壁では厚さ10cm以上が相当する。また,2000年10月よりスタートした『住宅性能表示制度』では,集合住宅の音環境として,床衝撃音,外壁(開口部)と併せて,界壁の透過損失等級を4等級(等級1が建築基準法の性能に相当)規定しており,等級3とするにはコンクリートの厚さは18cm以上,等級4では26cm以上が必要になる。
 超高層マンションでは,構造的な観点から軽量化が要求され,また,施工性の観点から乾式工法が望まれるため,界壁には耐火・遮音性能が所要の性能を満足する「ボード貼中空二重壁構造(ボード二重壁)」が用いられる。マンションの界壁に使用できるボード二重壁は,建築基準法の規定によって2001年9月現在で約350種認定されている。これらの壁構造の中には,等級3,等級4に相当する遮音性能をコンクリート壁の1/8程度の重さで実現している商品もある。
 界壁を介する住戸間の遮音性能(空間性能)は,界壁構造自体の遮音性能(部位性能)と等価ではなく,種々な要因によって違ってくる。特に等級3,等級4に相当する高遮音性能の壁構造を用いる場合,窓・換気孔・外周壁などの隔壁以外部分の遮音性能も界壁の遮音性能に見合ったものにしなければ,それらの場所を経由する音(側路伝搬音)によって空間性能は1,2ランク(1ランクは約5dB)低下してしまう。これは,界壁がコンクリート構造であっても同様である。
 また,ボード二重壁の場合は,界壁と他の部位との取り合い部の施工において,隙間が生じないように経年変化や地震・熱変形に追従し易いシール材を選定し,適正に処置することが重要である。たとえ目視では分からない程度のわずかな隙間が生じると,遮音性能が2ランク以上低下する事例も報告されている。
 更に超高層マンションは,通常,正方形に近く,1住戸の平面形も多種多様となるため,平面的に見た界壁の位置が折れ曲がったり,遮音性能の弱い部分と取り合ったりする場合が多くなる。また,四隅の住戸では隣戸の室内が窓を介して見通せるような平面形もある。従って,側路伝搬音や隙間による遮音欠損が生じ易いと言える。しかし,遮音欠損が生じないように留意した設計・施工が行われれば,ボード二重壁を界壁とした場合でも,コンクリート壁と同等ないしそれ以上の遮音性能を得ることができると考えられる。

村石喜一(音環境研究所)