日本音響学会

音のなんでもコーナー

Q and A (097)

Q:

動物の鳴き声の最大音圧と最高周波数及び最低周波数はどのくらいですか? また,それらは動物の大きさとどんな関係があるのでしょうか。

A:

動物がどのような音を出そうと,それがコミュニケーションに役立たなければ意味がありません。そのためには,コミュニケーションをすべき相手に聞こえる範囲の音でなければなりません。このような観点から,実際に出すことのできる音の範囲ではなく,動物のコミュニケーションに使用可能な範囲の音について述べることにします。
 陸棲の動物について見ると,クロウタドリは1メートルの距離で最大約100dB(20マイクロパスカルを基準とする)もの音圧で囀ることができます。水中では,イルカの出す定位音(クリックス)は最大230dB(1マイクロパスカルを基準とする)にもなりますが,これを我々がそばで聞いたら耳がどうかしてしまうでしょう。
 コウモリは200kHzもの高い音をソーナとして使って狩りをしますが,コウモリやその獲物となる蛾が聞こえる範囲はせいぜい100kHzまでです。水中ではイルカの定位音が200kHz以上の成分を含みますが,彼らに聞こえるのはせいぜい150kHzまでです。イワシは魚類にしては例外的に高い音まで聞くことができますが,これはイルカのクリックスを感知して逃れるための適応でしょう。
 低い方の音をコミュニケーションに使うことが知られているのは,ゾウです。彼らは数ヘルツという超低周波音を聞き,数十ヘルツの音を発しています。
 低い音に関しては,体の大きさが限定要因になります。低い音は,発音器官の長さに依存するからです。ですから大きい動物のほうがより低い音を出せることになります。高い音のほうは,イルカのクリックスでも分かるように,体の大きさで限定されるわけではありません。

岡ノ谷一夫(千葉大・文)